[1178-201602] 千葉刑務所謹製 ハンドソーン・ウェルテッド製法 紳士靴。その先に勝手にこの靴を作られた受刑者の姿を感じる。自己満足だとは分かりながら。

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一昨年秋の府中刑務所文化祭の時から折に触れ取り上げていた千葉刑務所謹製靴。オーダーはしていたものの事情があって受け取りが遅れていたのですが、昨日ようやく受け取りましたのでご報告します。

新聞などで取り上げられたことで元々年産50足程度だったところに注文が殺到し、現在では1年待ち以上になっているようです。非常に良い靴だと思いますが、ただ安い、というだけで終わらせたくない革靴だと思いました。

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千葉刑務所 謹製靴とハンドソーン・ウェルテッド製法

千葉刑務所は刑期8年以上の初犯者(重罪初犯者)を収容する男子刑務所です。初犯を扱うこともあり、著明な受刑者や有名な事件の受刑者も多いそうです。刑期が長いことから比較的高度な技術習得が可能であり、現在革工には53人が就業、紳士靴や婦人靴を製作しています。その内の一つがこのブログでも取り上げているハンドソーン・ウェルテッド製法のオーダー紳士靴です。

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革靴、特に少しお金に余裕が出来て趣味になった時に、高級ブランドの名前とともに非常に魅力的に映るのが製法。「ハンドソーン・ウェルテッド製法」は機械による大量生産大量消費が一般的になった現在ではただ「手縫い」というだけで持てはやされます。実際手縫いによる良さは確かにあり、しっかり作られた手縫い靴は確かに足に吸い付くようなフィット感を感じることが出来ます。フォルムも機械ではなかなか難しい立体的なものが出来るため、一見して非常に良い、美しい靴だ、と分かりやすいのも魅力です。

ただ、履き心地を左右するのは単に製法だけではなく、木型であったり、紙型、また製甲や底付けの過程や芯材など、様々な要因が大きく影響します。裏を返せば、それらにしっかりコストと手間を掛けられるのであれば、大量生産の可能な機械によるグッドイヤーウェルト製法などでも履き心地は詰めていけるわけです。

また、日本で手縫いの靴となると、それなりに需要も限られてきます。更に求めるものも多くなってきます。もちろん材料費やその他手間、更に職人をその期間その靴のために確保するわけですから、その人件費もかかります。結果として価格が上がってきます。手縫いだから、機械式だから、だけで良さが決まるわけではありませんが、結果として手縫い靴のほうが求めるものも高くなり、結果として価格も上がる。またよりオーダーメイドに近くなってくるため、履き心地も分かりやすい。

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そうした中で、受刑者の改善更生、また出所後を考え高度な技術を習得することを目的として作られるため、人件費が抑えられています。また素材等もギリギリまで利益を落としているのも、この謹製靴が48,000円という価格で提供できている事情です。

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[1047-201510] 第40回府中刑務所文化祭は今年も11月3日。謹製靴をオーダーする方に気をつけておいてほしいこと。 | Life Style Image

甲革アノネイ黒のパンチドキャップトゥ。規格品の24.5cm。

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今回完成した靴は、定番中の定番、ストレートチップに親子穴のみを足した、パンチドキャップトゥと呼ばれるデザインです。甲革は三種類から選び、色を決めるのですが、黒ということでアノネイ社のものを薦められました。

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届いた時点でしっかりお手入れを済ませてワックスもつま先と踵に入れて磨かれており、非常に綺麗な靴でした。その心遣いが大変嬉しかったです。

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サイズは私の足長は26cm弱あるのですが、こちらの靴では24.5cmまで下げる必要がありました。かなり甲周りの高い木型で、この24.5cmでも羽根部分(紐のある部分)はほぼ閉じてしまいます。25cmだとつま先は少し楽にはなるのですが、結果として紐で押さえられないので前滑りや踵の浮きが出てくる恐れがありました。

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規格品では木型に革を貼ったり、乗せ甲などで部分的に大きくすることは出来ますが、削ることは出来ません。規格品の木型との相性が良くなければ、幾らハンドソーン・ウェルテッド製法であっても、思い描いているほどの快適さは得られないかもしれません。この辺りはしっかりと足を入れてみて、担当の鈴木さんと相談する必要があります。

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一度製作すると、靴を作った際に使用した(木型に貼った)革も送ってくれます。履いていて問題がなければ、次回からはこの革を注文時に送れば、電話などでも注文が可能です。

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昨夜届いた時点で足入れをした限りでは指周りの窮屈感があったのですが、最近私はvibram fivefingers(5本指の靴)も履く関係で少し厚めの5本指ソックスを履いていました。今日革靴用の薄手の靴下で履いて半日歩いてみましたが、全く問題ありませんでした。

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底もなかなか立体的です。また手縫い靴の良さの一つとして、最初から返り(底の曲がり)も良く、歩きやすさが分かりやすい、ということがあります。この靴でもそれはすぐに感じられました。履く前は甲革自体硬さもあり、一見して固そうな靴に見えるのですが、実際履いてみるとなかなか履き心地は良好です。

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クリームの入り具合を見てみたかったので、先ほどお手入れをしてみたのですが、クリームの浸透も良く、塗りすぎに注意です。アノネイ社のボカルーカーフといわれていますが、この革は非常に有名で、ネットでも少し調べるとこの革の特徴は出てきますので、興味のある方は調べてみてください。

昨晩この靴を眺めながら、ふとこの靴を作られた受刑者のことを想う。

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私もこの靴を初めて知った3年以上前は、単に48,000円でハンドソーン・ウェルテッド製法が手に入る。しかも千葉刑務所謹製という特別感に惹かれ、ただ単に「安い」という気持ちだけでした。靴好きとして一足は買ってみたい、という興味だけでした。

ただ、今回こうして手元に靴が届いた時、ふとこの靴の先に、この靴を作られた受刑者が浮かびました。勿論名前も知らなければ、どういった罪を犯したのかも知りません。知ることも出来ません。

冒頭でも挙げましたが、刑期8年以上の初犯者(重罪初犯者)を収容する男子刑務所です。これだけの靴を作れるまでになったということは、既にある程度の刑期を過ぎている方でしょう。その方は、どんな気持ちでこの靴を縫われていたのでしょうか。そして、その方は、出所した後、どういう人生を送られるのでしょうか。

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もちろん私が勝手に感傷的になっているだけで、実際その方は特に何も考えずに一足一足作られているのかもしれません。勿論靴に愛情があるかどうかも分かりません。あくまで刑務所での作業の一つに過ぎないかもしれません。そうした事情は勿論分かりません。

ただ、この靴を目の前にして想うのは、この靴に感じる人の存在の強さです。想いや色々な感情の強さと置き換えても良い。それは受刑者の、という訳ではなく、そこに携わった方から、私のような全くの無関係で単にその靴をこれから履く人間の感情でもあります。そうしたものを感じやすい靴でもあります。

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この靴を作られた方が、この刑期で身につけられた技術を果たして出所後に活かせるかどうかは分かりません。この社会は前科のある人に決して優しくはありません。いえ、無関心なのかもしれません。

この方の犯した罪は、ご本人や被害に遭われた方や関係者にとっては残り続けたとしても、法律上は刑期を終えれば罪を償ったことになります。ただ、そう単純な話でないのも事実です。

この謹製靴を何も考えずに、愛用靴の中の一足として気軽に履くのが本当は良いかもしれません。誰もこの靴の先に何かを感じて欲しいなどと考えていないかもしれません。ただ、この靴を履くときに、ふと罪や犯罪、更に刑務所やその先にあるものにふと想いを巡らせてみるのも、悪くはないと思うのです。

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